<<用語解説(暫定版)>>
(私的解説。あいまいな表現で,不正確だとお叱りを受けそうです。間違っていたらご一報ください。)
場の量子論 多体の量子系を扱う道具です。物性物理学にも使いますが,素粒子論で使う場合は相対論的となります。素粒子⇒小さい⇒短距離なのでポテンシャルが大きい⇒運動量が大きい,からです。実は4年生まで知りませんでしたが,ここで相対論というのは特殊相対論で,特殊相対論と量子論とは全く無矛盾に(Feynman則の厳密性などの技術的問題はありますが)理論的に融合されています。
標準理論 場の量子論に基づいた素粒子のモデルで,現在までの実験結果を極めて正確に再現します。これは歴史的に別々に発見されていた電磁気力(Maxwellの時代からよく知られている身近な力)と弱い力(原子核のβ崩壊などに関与するが,遠距離で急減少するので日常生活ではあまり感じられない力)とを統一した理論です。これらの力は通常実験されている程度の低エネルギーでは弱いため,そのような領域では実験と良く一致する近似計算ができます。計算というのは,電荷,スピン,色電荷,あるエネルギーでの質量,などによって判別される素粒子がどのように,どのくらいの強さ(頻度と言う方が感覚に近い?)=結合定数で相互作用するかを記したラグランジアンから,場の量子論を使って,粒子を衝突させたときどのような反応が起こるかという確率などを予言することです。
4つの力上で説明した2種のほか,強い力は現在観測されている粒子がみな「無色」となるように,3個のクオークを核子内部(あるいはクオーク-反クオーク対を中間子内部)に閉じ込めているとされる力で,とても強いのでクォークが単独で観測されたことはありません(従って,世の中「色電荷が中性」=無色なものばかりなので身近でないのです)。ごく短距離では繰り込みの効果で弱くなるため定量的な摂動計算もできます。最後に重力は,電磁気力と同様に長距離まで及ぶ身近な力ですが,現在実験された程度の(私たちが到達可能な最高エネルギーでも,重力にとっては低い)エネルギーでは判別できないほど弱いのです。電磁気力は日常的スケールで大半が相殺していて,たまにイオンがはがれたときだけ顕わになるのに対し,重力は引力のみで,ミクロな個々の素粒子は当然軽いので,それらの間に働く重力はとても弱い,という意味です。もっとも古典的重力ポテンシャルの量子系に及ぼす効果は,精密な干渉実験などで確かめられており,理論計算と一致しています。実は1ミリメートル以下での重力のふるまいは測定されていません(他の力の影響を完全に除くのが難しいため)。もしかしたらファンデルワールス力のように,他の力から導けるものなのかも知れませんね!?あ,でも逆2乗則をいくら重ねてもそれ以下の冪しかできないので,無理か・・・。
電弱統一理論 標準理論における電磁気力と弱い力の統一というのは,これら2種の力が同一の機構に基づく―各々光子;光子と似ているが重くて電荷があるのもある3種のゲージボソンZ0,W±で媒介されて,弱超電荷の移行する反応では必ず電荷も同時に移動する―という意味です。このとき1+3=4個のゲージボソンは,まとめて2×2ユニタリー行列で表されます(SU(2)L×U(1)Y対称性)。この行列にかかるベクトルは左巻きのフェルミオン対を表し,
レプトン族なら(電子ニュートリノ,電子),(ミュ−ニュートリノ,ミューオン),(タウニュートリノ,タウオン);
クォーク族なら     (アップ,ダウン),      (チャーム,ストレンジ),       (トップ,ボトム)
という,相手の決まった6対です(ヒッグスボソンの対もありますが例外的です)。右からかかったベクトルが,左からかかったベクトルになる割合が真中の行列です。対の中の、右列のレプトンがW-ボソンを放出(あるいはW+ボソンを吸収)して同じ対の左列のになることや逆反応が起こりえます。同様に,対の中の右列のクォークがW-ボソンを放出(あるいはW+ボソンを吸収)して左列の(別の対でも良い)クォークになることや逆がありえます。これらのフェルミオンは飛んでいる最中に光子(電荷0のニュートリノ以外に対しては)やZ0ボソンを放出できます。Z0ボソンの放出率は左右巻きの違いに依存します。
 一般に,これらのフェルミオンがゲージボソンを1個交換する素過程の反応は必ず対から対へ,つまりA+B→A'+B'という形(を移項したもの)で起こります。矢印の段階はゲージボソンの内部交換に過ぎないので,エネルギーや電荷,スピンなどは全体として保存します。ゲージボソンはこの過程で,フェルミオンを介して間接的に観測されます。詳しい性質(自己相互作用など)は略。なお,粒子-反粒子というのはゲージ電荷が逆なほか質量などの性質の等しい素粒子対で,ごく自然な仮定から成り立つCPT定理によれば,一方が存在すれば他方も必ず存在します。ただし小林−益川理論によれば,クォークを含む物質(バリオン)とその反物質とで寿命の違うこともあります。これは上で(別の対でも良い)と書いた事実から説明できます(3対のクォークのどれがどれに行くかによって3×3通りの場合があるため,その様子を表わす3×3行列を小林−益川行列と呼びますが,これは後述する強い力の3×3行列とは無関係です)。W+はW-の反粒子ですが中性ボソンである光子やZ0の反粒子は,各々自分自身です。電子が飛んでいる最中に光子を放出する反応は,移項すれば電子-陽電子が対消滅して光子になる反応と同じです。標準理論では,ニュートリノの弱超電荷は1/2なので,反粒子は自分と別です。ただしニュートリノは,いずれにせよ反応しにくいため,それほど良く性質がわかっていません。
自発的対称性の破れ 電弱統一理論においてSU(2)L×U(1)Y対称性がもし完全ならば光子と他のゲージボソンはみな質量0のはずなのですが,現実はそうでなく光子以外はかなり重いです。つまり世の中そんなに美しくはなく,真ん丸な林檎はどちら向きにでも回せますが芯をつければその周りの回転しかできなくなるような感じで,光子方向だけ特別なのです(まあ,だからこのように多様な力が存在できるのですが)。この結果,一つ特別な軸がある(対称性を理論的に制御するための道具であるヒッグスボソン対のうち実1成分が0でない真空期待値を持つ)だけで一気に3つのゲージボソンが質量を獲得します(SU(2)L×U(1)Y→U(1)EMへの自発的対称性の破れ)。
  なお,ここで「自発的」というのは,「ラグランジアン自体は対称なのに」という意味です。例えば,立方体型の針金枠にせっけん膜を張るとしましょう。(重力などを無視した場合)膜は,表面張力のためにできるだけ面積が小さくなるような形になります。こういうのを極小曲面といいます。ところがその形を,立方体をまわしていろいろな面から見るとどうなるでしょうか?−思考実験からわかるように,方程式(の組)がある対称性を持てば,解も境界条件やトポロジーによって,同じ対称性を持つか,さもなければ対称移動しただけ複数ありえる,というわけです。一般には,「対称性を破る解が複数存在する」場合の方が多そうな気がしますよね。水素原子のp軌道のように・・・(普通は「等方的な液体が低温で結晶に相転移する」というような場合を考えることが多いですが,ここではわざと別の説明をしてみました)。

質量 上に書いた6対のフェルミオンは,おおむね右に行くほど重いです(※) 。重い素粒子はエネルギー的にそれより軽い素粒子に崩壊可能で,実際たいてい重いほど不安定になります。ただし陽子のメソンと反レプトン達への崩壊は観測されていません(※※)。わずかな確率で起きる可能性も否定できません。理論的には,複雑な「次元の大きい」相互作用ほど稀な現象になるはずで,そのような項をラグランジアンに加える可能性があるからです。ポアンカレ(=ローレンツ+並進)対称性から全角運動量や4元運動量は当然保存し,ゲージ対称性から対応するゲージ電荷も保存しますが,比較的単純な項のみを含む標準理論では,バリオン数とレプトン数(少なくとも、真空の遷移が無視できる摂動的領域では)やパリティ(弱い力を除く)なども保存します。保存則を破る崩壊モードは禁止されますし,ポテンシャルの形や統計なども関係した複雑な兼ね合いで粒子の寿命は決まります。質量0の光子も,高エネルギーでは例えば電子-陽電子を対生成できます。そのような閾値は,できる対の質量によります。
 ところで質量というのは意外とあいまいなもので,媒質に依存します。クォークは単独で観測されたことがないので,その質量も推定ですが,核子の中にいるときその質量の大部分は,色電荷を隠すように周りを覆う「パイオンの雲」で担われています。従ってどこまで近づくかによって値が変わります。これは繰り込みの効果の1種です。ゲージボソンの質量は,ポテンシャルをヒッグスボソンを使って書いたものから解釈できます。林檎の例でいえば,芯の周りの方向以外には回しにくいですが,その回しにくさ(ポテンシャルをヒッグスボソンで2回微分した係数=曲率)が質量の2乗なのです。他方,フェルミオンの質量は,フェルミオンのヒッグスボソンとの相互作用を表す湯川相互作用項にかかる,「手で入れた」係数パラメータです。フェルミオン毎に異なります。ただし標準理論では,ニュートリノの質量は0です。このようにヒッグスボソンは,質量項を出すために導入した技巧といえます。
(※ほぼ0のニュートリノを除く。正しくは,e<<u<d<<μ<s<<c<τ<b<<W±<Z0<tで<<は約十倍。)


警告:この用語解説は私個人の偏見が 多分に入っており、本来、一般に受け入れられている解釈と 同じものを目指してはおりません。特に以下の2つの項目は、 はっきり言って「少数派」の意見を含みますのでご承知おきください。 この点について、ご批判も多く頂きましたが、「私的解説」だという 意味を明確にした上で、私が別の解釈に納得できるか実験的証拠が 出るまでは掲載を続ける予定です。

大統一理論 他の2つの力を媒介するゲージボソン―強い力では3×3ユニタリー行列の9個の成分から単位行列に比例する1個を除いた8個のグルーオン(SU(3)対称性),重力では4×4実対称行列のうちLorentz変換や単位行列に比例する成分や縦波を除いた潮汐力型の2個のグラビトン―は,まだ単独で観測されたことがありません。これらは現在電弱力と統一されていませんので,各々別のひとつの結合定数,つまり強い相互作用の結合定数と重力結合定数,を持ちます。電弱力と強い力を統一しようとするのを大統一理論といいます。数学的には力の対称性をあらわす各行列を,たとえばひとつの大きな行列(既約表現)にまとめることになります。この場合,統一された力の結合定数は共通になります(※※※)。行列は反応の割合という意味を持ち,粒子の個数を過不足なく説明しなければなりませんので,ただ並べて書けばよいというものではありません。統一しなければ理論的に矛盾するわけでもありません。(※※陽子崩壊は,標準理論では起き得ませんが多くの大統一理論ではわずかな確率で起きるはずの現象です。)(※※※単位行列は「任意の行列と可換」という意味で特別なので,U(1)Yの結合定数は他と異なっていて構いません。異なるからこそ,W,Zの質量差が説明できるのです。)
 ところで,結合定数は一般にエネルギーによって変化し,あるエネルギーでの値が実験的にわかれば繰り込み群方程式を解くことにより他のエネルギーでの値も見積もれます。その結果,ある(現在の実験では到達できていない)高エネルギーで電磁,弱,強の結合定数が一致する,つまり対称性の破れが回復する可能性のあることがわかりました。従って極めて高エネルギーでは,それら3つの結合定数の,横軸をエネルギーにとったグラフが一点で交わるのではないかと期待されています。このような理論的興味と目的を持って研究している人もいます。

超対称性 歴史的にはSU(5)大統一理論が提唱され,素粒子を5×5行列にまとめた美しい理論でしたが,残念ながら結合定数が同じという要請は条件が厳しすぎて,実験と矛盾することが明らかになりました。そこで,他に超対称性という,各ボソンをフェルミオンに変える対称性をもつ大統一理論が提案されました。超対称性を仮定すると,計算が楽になります。ただ,新しい対称性に伴って各素粒子に対応して存在するはずの, 逆統計の超対称粒子(先ほどの説明どおり,対称性というのは反応が必ず,ベクトルの次元に相当する個数の素粒子の組同士で起こることを意味します)は,これまで1個も観測されていません(もし超対称性が成り立っていれば、素粒子とその超対称パートナーは、同じ質量でなければなりません。従って、当然同じくらいエネルギーがあれば作られるはずです。このままでは明らかに実験結果と矛盾するので、「超対称性の破れの機構」が 問題になっているのですが、そもそも一個も見つかっていないのですから、破れている というより元々ないのではないかと思います)。
 超対称性を仮定すれば上記の3つの結合定数のグラフが1点で交わるとされています。これは,3直線の位置がある条件を満たせばただ1点で交わるようなもので,その交点を過ぎたもっと高いエネルギーでは3つのグラフがまた離れていきます。従って,偶然生じたその交点で新しい現象が起きるとか,物理的な意味を期待するのは,不自然だと思います。私の所属する研究室では,先生を含めて7割くらいの人が超対称性を仮定した研究をしています。中には学術振興会や科研費からお金をもらっている人も結構います。けれども私は,たとえお金をもらっても,このような研究をしたくありません。超対称粒子は存在する物理的粒子ではないと思うからです。それにはもう少し積極的な理由もありますが今は述べません。なお, 素粒子で言う超対称性理論の「超」は、超新星や超伝導とは全く無関係です。また,超弦理論というのは超対称性のほか,高次元(10次元くらい)でかつ曲がった時空を仮定した理論です。これも上記の人数に含めました。
 このように指導教官のご研究とも対立するような意見を,あえてホームページで述べるのは,正直言ってためらいました。今も,どのように評価されるか正直言って不安です。(実際,超対称理論や超弦理論の研究で,いわゆる「飛び級」で博士号を取った人を知っていますが、私の初めて投稿した単名論文は「数学的すぎて物理的価値がない」という理由でリジェクトされました。超弦理論は数学だと思っている人も多いでしょうが、私の研究室のほとんどの人はそれで通っています。他方、私の真性特異点や,理論に必然的に含まれるあいまいさ,測定誤差に関連する研究は,数学的な間違いの指摘は全くなかったのに、通りませんでした。それにもかかわらずわざわざセミナーに招待してくださった某研究室の方々には感謝いたします。世の中,捨てる神あれば何とやら,で,もう少しあきらめずに頑張ってみようと思います。全く実験的支持がなくても、有名な先生と共著したりして雑誌に載れば,立派な業績になります。それが年収240万円を超して,旅費などにする科研費も個人で自由に使える学術振興会特別研究員選考の,主要な評価材料となります。これらは全て税金で賄われています。さらにもし専門分野の研究能力に優れているとみなされる特別研究員ともなれば,一通千円くらいで論文のレフェリーをするアルバイトの依頼が来ます。もっとも先生の科研費で運営されている研究会では,私たちただの学生にも講演すれば大体旅費補助が出るため,安心して出席することができるのです。私も過去3回くらいは,京都への旅費を援助して頂いて出席しました。「超対称性」の研究を資金源にしている研究会には,わざと出ませんでしたが。発表する人,高学年で無給の人ほど補助が優先されるため,修士の頃はちょっと大変で,野宿して聞きに行った研究会もあります。あー恥ずかしい。入学当初は「本郷では受入教官がいないから,(育英会などの)奨学金を使ってつくばに行くように」「院試の成績が悪かったから,博士課程ではとらない」と言われました。育英会は返還義務があり経済的に無理なので,確かに興味分野に近い先生方はいらっしゃるのですが,つくば行きは断りました。民間奨学金には,素粒子は役に立つ研究ではないし幸い家族全員健康なので応募しませんでした。研究室には税金を使って海外で発表したり,留学したりしている人も結構いますが,私自身は飛行機に乗ったこともありません。実際、理論物理では論文発表手続きもメイルでのやりとりがほとんどです。わざわざ飛行機代だけで20万円以上使って,海外で研究する必要はないと思うのですが,皆さん箔をつけるために行くのでしょうか?京都の基礎物理学研究所は存続が危ういようですが,(全国共同利用で)研究会をインターネットで公開中継している唯一の研究所です。まさか,自分の研究の詳細を知られては困る人物が,圧力をかけたわけでもないでしょうが,このようなところにこそ公費を投資するべきだと思います。もっとも研究所自体には,超弦理論の研究をする人が多くて残念ですが)でも,大学は自由な学問の場であるべきだと思います。私を裏切り者と呼ばないでください。なぜなら,当初はどのような研究が行なわれているか知りませんでしたし,自宅から通える,物理で有名な国立大学だから受けたのに過ぎないからです。他の大学(院)は,経済的事情で受けられませんでした。それに私は,かつて一度も,この理論に賛成する発言をしたことはありません。むしろ(消極的にですが)不賛成の意思を表明してきました。(こういう話って,本人には人生のかかった深刻な悩みでも,他人事として聞く分には楽しんでいただけるのではないでしょうか?実は修士論文も,先生から勧められたテーマは結局全て削除しました。なぜ博士課程に行けているのか,自分でも不思議です。「絶対行きたい。中学生からの夢でした。あまり指導してくださらなくても,誰でも良いから行かせてください」と強く言ったからかしら?だから,若い方々には,もし自分の本当にやりたいことがあるのなら,先生に何と言われようが,決してあきらめず喧嘩するくらいの気持ちで取り組んでいただきたいです。生活の保障はできませんが。)

発散の問題 入射粒子の決まった実験で起こりうる,その生成粒子を生むような様々な過程の振幅を,単純なものから始めてできるだけ多く考慮し,足しあげてから絶対値二乗することによって確率が計算できます。結合定数は「頻度」のようなものだと書きましたが,いくらでも複雑な過程がわずかな確率で起こりえますので,どこかで打ち切らなければなりません。ところが,反応によっては,答えが発散してしまいます。それは,微分方程式を解くのですが物理量は非可換な演算子なので順序を考慮しなければならず,積分演算子を用いるからで,運動量の0や無限大になるところが問題となります(IR・UV発散)。もっとも少なくとも標準理論において,それらは解決済みです(例えば電磁場と電子のみを考慮したQEDでは,はじめから特定の種類の過程を無限級数のようにして一気に足し上げると,対数的な発散にまで次数を抑えられます。さらに質量や結合定数を繰り込んで再定義することにより物理的に正しい結果が得られます。これは摂動論の結果当然起こりえることで,論理的にも矛盾しません)。さらにどうしても解析的に計算できないところはシミュレーションすれば良いのです。逆に繰り込み不可能な理論は自己矛盾すると考えられています。もっとも,いずれにせよ桁を上げるにつれ指数関数的に多くの粒子が関与するため,高精度で計算するのはコンピュータを駆使する大変な作業のようです。また現在の実験を超える超高エネルギーでは,理論の不定性も大きいです。

以下はちょっと専門的でわかりにくいでしょうがご了承ください。

電荷の量子化 実は、大統一理論でなくても言えます。標準理論では重力を考慮してもアノマリー打ち消し条件は変わりませんが、連立方程式を解くことにより各素粒子(フェルミオン)の電荷の解として3通りの組み合わせのみがありえます。そのうち電子は電荷−eをもち、クォークの左右まき成分の電荷は同一符号であるという当然要求される実験事実から、ひとつの解だけが物理的に許されます。謎めいたクォークの分数電荷は、こうして理論の(フェルミオンのカイラル変換の下での)無矛盾性から決まるのです(参考:A. Dobado et al., `Effective Lagrangians for the Standard Model', Springer 1997)。
一般共変性 標準理論では座標変換に関する対称性として,どの慣性系,つまり互いに等速度運動をする観測者たちからみても物理法則は変わらないというポアンカレ共変性のみを仮定しています。ところがこれを加速度をもつもっと一般の座標変換に対して拡張したものが一般共変性で,その分理論に対する条件は厳しくなります。アインシュタインの一般相対性理論や超弦理論というのは,この一般共変性を主要な仮定として出発点においています。ところがワインバーグの論文を紹介したトラペでも解説しましたとおり,質量0のゲージ場に対してはポアンカレ不変性すら成り立ちません。余分な「おつり項」が出て,それこそがクーロンポテンシャルやニュートンポテンシャルを生む原因となるのです。逆に一般共変性が厳密に成り立っている理論では,これらのポテンシャルは存在しません。実際,超弦理論では全ての粒子が質量0で,一般座標変換に依存しない量,つまりトポロジカルな量しか保存しないのです。また、もし一般共変性が成り立っていたとすると、どのように 曲がった時間軸をとっても良いことになってしまうため、量子化すると時間発展が 失われます。

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